【物理】【院試】院試対策と参考書

 先日院試を終えたうぇいぱーです。

 僕の院試対策を紹介します。また、学部物理の勉強や院試勉強などをしていく中で読んだ、もしくは読もうとした物理学・数学の参考書を主観的に評価しました。

 その前に軽く自己紹介します。

 

筆者:うぇいぱーについて

 

 できるだけ読者の皆さんの参考になるように書くつもりですが、まぁ僕が書きたくて書いているのでご容赦ください。ネットを探せば合格体験記なんて山ほどあるので真剣に情報が欲しい方は僕も参考にしたこちらのサイトもおすすめです。

【院試物理】おすすめ勉強法・参考書 まとめ【東大院試】 | 凡才たぬきの物理

 でもよかったら僕の記事も読んでね。

 

目次

 院試対策向けの本には(院)と記しています。もちろんこれらの教科書は普段の勉強でも使えます。評価は物理で役に立つか、面白いかという観点で☆0(最低)~☆5(最高)で付けました。

  1. 院試勉強のおおまかな流れ
  2. 物理数学
  3. 力学
  4. 解析力学
  5. 熱力学
  6. 電磁気学
  7. 統計力学
  8. 量子力学
  9. 物性
  10. 相対論
  11. 宇宙論
  12. 場の量子論
  13. さいごに

 

1.院試勉強の大まかな流れ

2月:学部1年で熱力学を学んだが全然分からなかったので清水熱力学を読む。立教(夏)の過去問を1年分程やって時間無制限なら5割くらいとれると思い慢心する。

3月:引き続き清水熱力学を読み、13章まで読み終わる。立教(春)の過去問をやってあまりにも解けず絶望する。J.J.サクライ『現代の量子力学』を読み始めるが、1章が難しくて断念する。同『演習現代の量子力学 J.J.サクライの問題解説』も1章で断念する。TOEIC対策で単語帳を覚え始める。

4月:卒論ゼミが始まり、主にSchutz "A first course in general relativity"で相対論、Ryden "Intoroduction to cosmology"で宇宙論、坂本場の量子論を学び始める。卒論ゼミの輪講の準備に慣れず、院試勉強はほとんどできなかった。TOEICを受験し625点を取る。

5月:本格的に立教の過去問を解き始める。(ほぼ合格者のいない)内部進学用の面接でコテンパンにされたのがきっかけで院試へのやる気が高まる。この面接対策のため黒体輻射について復習し、重力波の勉強をした。(出題されなかったけど。)

6月:立教過去問演習。立教大は10年分解いた。フーリエ変換、Green関数と留数定理について復習。京大と総研大の院試日程が被っていることに気づき、慌てて京大の最新の過去問を1年分、総研大の過去問を2年分解く。京大を蹴ってまで総研大にしなくてもいいかと思い、京大を受験することを決める。志望理由書を書くが、想定より時間がかかって焦る。力学で慣性モーメントが何かも説明できないほど剛体が苦手だったので、兵頭俊夫『考える力学』の剛体を総復習した。

7月:立教過去問演習。立教大の過去問10年分の2週目。2週目なのに解けない問題があって焦るが、丁寧に講義ノートと教科書で復習。また電磁気学量子力学が苦手だったので、その2科目は学部の演習の授業の問題を全て解きなおした。立教大合格。院試後はしばらく期末試験のため一般相対論を勉強。期末試験後に京大院試対策開始。

8月:京大過去問演習。京大は4年分くらい解いた。東工大は試験直前に午前の問題を1年分解いた。立教のおさえのつもりだったので舐めプである。砂川重信『理論電磁気学』で電磁波の放射について復習。東工大、京大院試後、伊藤正人『ファーストブック 量子力学がわかる』を読み始める。面接対策のため、黒体輻射の復習。

9月:量子力学と相対論を並行して勉強。東工大不合格、京大合格。

(注)過去問演習とは以下のことを指します。

1.時間無制限で自分が解けるところまで解ききる。

2.解けなかった問題は問題集の類題や教科書を読む→本を閉じて自力で解く。解けなかったらその都度問題集や教科書を読み返す→また本を閉じて自力で解く、を何も見ずに自力で解けるまで繰り返す。(正直な話、解けなかった院試問題で理解を諦めたものもあります。)

3.解けなかった問題を類題を参考に解く。

4.(2周目)時間制限を付けて解く。

 

2.物理数学

  • 論理と集合から始める数学の基礎、嘉田勝、日本評論社
    ☆0    ほぼ未読。数学科向け?非常に厳密に数学を展開するためには必要だし良い本だが、物理には要らない。
  • ヘンテコ関数雑記帳、佐々木浩宣、共立出版
    ☆?    ほぼ未読。物理には要らないけど、ランベルトのW関数を使うと空気抵抗がある時に最も遠くに投擲するための角度を示せるのは面白かった。
  • (院)物理数学の応用技法、大谷俊介、プレアデス出版
    ☆5    一度他の物理数学の教科書や授業でしっかり勉強した人向けの非常にしっかりしたまとめノート。少し忘れてるくらいならこれを読めば思い出せるし、物理ですぐに使える数学が簡潔にまとめられててとても良い。全部丸暗記しても良い。
  • 数学で物理を、武部尚志、日本評論社
    ☆?    ほぼ未読。ベクトル解析の勉強に買ったけど講義ノートで十分だったので読んでない。今少し見てみると微分形式の話が載ってたので少し興味が湧いた。
  • (院)入門微分積分、三宅敏恒、培風館
    ☆4    学部1年の微分積分で指定された教科書。重積分偏微分など、大学物理数学で重要な微分積分を十分学べる。無限級数の収束半径も載ってて、立教院試では出なかったけど、東工大院試では出題されるからやっとくといいと思う。
  • 線形代数学、佐武一郎、裳華房
    ☆3    線形代数の勉強はこれをやれば数学科レベル。とても良い本だが、難しい。他の教科書で線形代数を勉強して、納得いかなかったり証明が気になる人向け。
  • 線形代数[改訂版]、長谷川浩司日本評論社
    ☆3    先輩の勧めで購入。半分くらいまで読んだ。2×2行列で具体的に説明してくれるので、具体例を追い手で計算しながら勉強するのに良いと思う。ジョルダン標準形まで載ってるのが◎
  • (院)手を動かして学ぶ線形代数、藤岡敦、裳華房
    ☆4    学部1年の線形代数の指定教科書。分かりやすいし一番最初に学ぶのに良さそう。演習問題にも重要事項があるので演習まで手を抜かないこと。解法が思いつかないので始めは答えをすぐ見たほうが良いだろう。
  • 代数学1群論入門、雪江明彦、日本評論社
    ☆3    Twitterで知り合った数学科生に教えてもらった。物理で必要な群論は講義で教わったので、この本ほどのレベルは物理には必要なさそう。でも面白い。ちゃんとした数学の教科書なので証明もしっかり書いてある。入門用だが、僕には難しい。
  • (院)解析学概論、矢野健太郎・石原繋、裳華房
    ☆5    これ一冊で大学の物理数学1~3の授業(微分方程式、ベクトル解析、複素関数フーリエ変換)はほぼ網羅している。入門者にも易しい。

 

3.力学

  • (院)考える力学、兵頭俊夫、学術図書出版
    ☆4    解析力学を使わない、大学に入って微分積分外積を使った力学をやるならおすすめ。読みやすいし、入試頻出問題の考え方を学べる。特に角運動量と慣性モーメントの範囲は入試に頻出なので、高校で簡単な微積をつかった力学をやった人でもこの範囲はちゃんとやるべし。
  • (院)詳解力学演習、後藤憲一・山本邦夫・神吉健、共立出版
    ☆5    入試にはこの本にない問題は出ないと言ってよい。辞書。解説はやや分かりにくい。とにかく問題数が多いので全部解くような問題集ではないが、演習をしてて分からなかったら調べるスタンスでやると良い。

 

4.解析力学

  • 力学、ランダウ・リフシッツ、東京図書
    ☆4    学部2年の解析力学の指定教科書。初めて読んだ時は難しすぎて全然読み進められなかったけど、今読むとまあまあ読める。解析力学ラグランジアンを使うおかげで普通の力学より運動方程式を立てるのが楽で素晴らしい。

 

5.熱力学

 (熱力学はあまり院試にでません。面白いんだけどねぇ......)

  • 物理学講義熱力学、松下貢裳華房
    ☆1    学部1年の熱力学の指定教科書。高校の熱力学。熱力学の考え方が全く分からない。僕はこれをやっても手は動くけど問題は解けなかった。
  • 熱力学の基礎Ⅰ・Ⅱ、清水明東京大学出版会
    ☆5    めちゃくちゃ面白い。高校や学部1年で熱力学を学んだ時に熱力学が全然分からなかったのにこれを読んですっきりした。ただ、公理論的な進め方をするので公理の理解が難しく、温度が出てくるのが本の中盤という異質な教科書。でもそれに耐えるだけの価値は十分すぎるほどある。

 

6.電磁気学

(電磁気学のききどころ?しらないなぁ......)

 

7.統計力学

  • (院)統計力学Ⅰ・Ⅱ、田崎晴明培風館
    ☆4    学部3年の統計力学の指定教科書。講義ノートで十分だったのであまり読んでいない。場の量子論を少しかじって院試が全て終わってから黒体輻射のページを読むと鳥肌が立つほど面白い。電磁場を量子化することで電磁場を量子調和振動子とみなせて黒体輻射を記述できるのか...
  • (院)大学演習熱学・統計力学、久保亮五、裳華房
    ☆2    この本に載ってない問題は院試に出ないと言われるが、難しすぎてそもそもこの本に載ってるレベルの問題も院試に出ない(京大を除く)。辞書。授業で十分統計力学を理解できたのであまり読んでいない。

 

8.量子力学

 量子力学は正直何を勉強したらよいかよく分かりません。物理の問題というよりは量子力学に関する計算の問題(交換関係、線形代数の特に固有値問題微分方程式等)ができればよいという印象があります。

  • (院)新版量子論の基礎、清水明サイエンス社
    ☆4    学部3年の量子力学1の指定教科書。演算子形式で初めて量子力学を勉強するのに良い。公理論的で本質を理解できる。演算子形式なら量子情報とかの有限自由度・離散固有値の系に非常に強い。始めは縮退なしで勉強して、2周目以降に縮退ありの場合で勉強しなおすと良いと思う。(最近の院試の量子力学演算子形式、有限自由度系の量子情報関連の問題も増えてきている。波動形式の猪木川合などだけで院試に臨むのは危険だと思う。)
  • (院)現代の量子力学上・下、J.J.サクライ、吉岡書店
    ☆3    とても良い本だと思うが、難しくてあまり読んでいない。演算子形式。シュテルンゲルラッハの実験から入るので難しい。調和振動子を生成消滅演算子で解く方法はこれで勉強しよう。
  • (院)演習現代の量子力学 J.J.サクライの問題解説、大槻義彦監修・飯高敏晃著、吉岡書店
    ☆2    ジャンル分けされていないので辞書としては使いにくい。前の問題を使って次の問題を解くことが多く、その問題だけで完結していないので読みづらい。院試にはあまり出ない問題が多い印象。
  • (院)量子力学1・2、猪木 慶治・川合 光 、KS物理専門書
    ☆3 良い本だと思うが、難しい。古い院試ではここに載ってる問題がそのまま出たりする。過去問で波動形式の解けない問題があったらとりあえずこれを見る。
  • (院)ファーストブック 量子力学が分かる、伊藤正人、技術評論社
    ☆5 めちゃくちゃ分かりやすい。計算できるようになるだけでなく、物理が見えるようになる。式変形の計算も丁寧に書いてあるし、数式の意味も解説してくれる。波動形式で勉強するならまず始めにこれを読めばいいと思う。院試で頻出する有限井戸型ポテンシャルの束縛問題やトンネル効果も詳しく解説している。院試前に読めばよかった...

 

9.物性

  • 物質科学の基礎 物性物理学、溝口正、裳華房
    ☆?    学部3年の物性概論の参考書として購入。読んでない。

 

10.相対論

  • 相対性理論の考え方、砂川重信、岩波書店
    ☆2    学部1年の特殊相対論の授業の為に購入。線形代数を学んだ今となっては使い道はない。シュッツの特殊相対論で十分。だが今読むと考え方を学ぶ上ではまとまってて意外と悪くないかも。
  • 相対性理論入門講義、風間洋一、培風館
    ☆2    上記と同じ。
  • A First Course in GENERAL RELATIVITY、Bernald Schutz、CAMBRIDGE UNIVERSITY PRESS
    ☆4    学部4年の宇宙研ゼミで購入。初心者にも分かりやすい。細かいところまで丁寧に書いてあるが、佐々木さんやWaldの教科書に載っているような、リー微分などが載っていなくて物足りない。
  • 相対性理論、David McMahon、プレアデス出版
    ☆3    図書館で借りた。シュッツで足りなくて佐々木さんの教科書で分からない、かゆいところに手が届く本。非座標基底(非ホロノミック基底)がテトラッドだと知った。キリングベクトルについても載ってて良い。
  • 一般相対論、佐々木節、産業図書
    ☆1 学部4年の相対論の授業で使った。行間が広いなんてものじゃなく、ほぼ計算は載ってない。初めて読むには不向き。
  • General Relativity、Robert M. Wald、University of Chicago Press
    ☆? 学部4年の相対論が分からなさ過ぎて、シュッツを読んでも分からないときにちょっとだけ読んだ。僕の指導教員は激ムズだと言っていた。

 

11.宇宙論

  • Introduction to cosmology、Barbara Ryden、Cambridge University Press
    ☆3    学部4年の宇宙論のゼミで購入。宇宙論について広く浅く書いてある。数学や考え方が詳しく書かれていないのが良くない。物理学科4年生向けNewton。

 

12.場の量子論

  • 場の量子論 不変性と自由場を中心にして/場の量子論(Ⅱ) ファインマン・グラフとくりこみを中心にして、坂本眞人、裳華房
    ☆3    ちゃんとやればいい本なのかもしれないが、説明が冗長で何が本質なのか分かりにくい。場の量子論の特徴だと思うが、前の章の計算ができないと次の章で何を言っているか、計算を追えなくなる。第二量子化はちゃんと理解したい。重力理論の研究室所属なので相対論ばっかりやってきたが、素粒子論研究室に進学するならちゃんとやりこみたい。

 

13.さいごに

 ここまで読んでくれた読者の皆さん、本当にありがとうございます。大学院を目指す皆さんに、少しだけお話させてください。人によって適切な勉強法は異なると思いますので、以下は参考になる人だけ読んで頂ければ結構です。僕は高校入試や大学入試で毎回試験直前にメンタルが病んで1~2カ月勉強できないといったことがありました。その反省を生かし、大学院入試勉強では無理な勉強を徹底的に避けました。試験で最も大切なのは健康でいることです。頑張って勉強することはとても素晴らしいことですが、大学院で勉強するために院試で鬱になって勉強できなくなるなんて本末転倒ですよね。疲れたら休み、夜はしっかり寝て、やる気の起きない日は遊びに出かけるのもいいと思います。そして楽しく勉強しましょう!皆さんが希望する研究ができることを心より願っております。

村上春樹「アフターダーク」

夏休みはあまり小説を読んでいなかったのと秋に入りメンタルが不安定になってきたのでメンタルの避難所として久しぶりに小説を読もうと思い、以前からよく読んでいて落ち着く村上春樹の小説を読もうと思った。本棚を見たら積読として置いてあった本書を見つけ、読み始めた。
複数のそれぞれ問題を抱えた登場人物が関わりあって1夜を過ごす様子を、読者の視点を誘導して描く話。
危険組織から身を隠すためラブホで働くコオロギ(人物)の「人間は大事なことであれしょうもないことであれ記憶を燃料にして生きている」という話に興味をもった。僕が精神の燃料にする傾向が強いのは未来への希望であり、記憶ではなかったからだ。受験で模試の判定結果が悪かったり過去問を全然溶けなかったりして精神が病むのは、将来の不安が強くなりすぎてこのままではダメだと思うからだ。逆に明日は楽しいことが待っている、これから先もずっと楽しいだろうと思うと元気がみなぎってくる。そうやって精神を保っているようだ。コオロギ、そして村上春樹はそうではない。今がつらい、そして将来の希望が見えない時でも、過去や記憶の中には良かったことだって沢山あるはずだ。それを思い出すことでじんわり温かい気持ちになれる。そうやって自分を元気づけているのだろう。
やはり村上作品は日常系というか、起承転結がはっきりしてて絡まっていたものがほどけて解決!という感じじゃなくて絡まったものは絡まったまま進んでいって広がって薄まって終わる感じがする。だから解決しなきゃいけない使命感・義務感に囚われなくていいし、話に展開がないから早く先を知りたいという焦燥感もあまり感じなくてマイペースに読めるのが良い。

バイクの面白さ①

(注)はじめに:本記事ではバイクに乗った話はまだ出てきません笑(えぇ...)。バイクに乗る前の経験が僕のバイクライフに非常に大きな影響を与えているのでどうしても分量が多くなってしまいます。それをご了承のうえでお楽しみいただける方はゆっくりしていってね

僕はいま村上春樹の小説「村上ラヂオ」を読んでいます。この本は村上春樹の日常を村上自身の独特な世界観で考察するエッセイなのですが、「高級レストランに行ったら隣の席の人がパスタをすする音に興ざめした」「猫にお手を教えるのはいかがなものか」「ウナギが好き」などのちょっとしたゆるゆるしたお話で魅了されます。このエッセイに刺激されて僕も身近なことについて感じたことを僕の言葉で語ってみたくなったので久しぶりにこのブログを書いてみることにします。今回は僕がずっとはまっているバイクについての面白さについて語ってみたいと思います。

高校生の時なんかはバイクになんの興味も持っていませんでした。親世代の影響か、不良の乗り物というイメージさえありました(母の話によると学校の校舎の中に扉をぶち壊してバイクのまま入ってきた不良がいたそうな笑)。それに自動車全般に言えることですが、運転操作を失敗すれば他者に危害を与えることになるし、自分も危険にさらされます。都会では公共交通機関が発達してるので自家用車の必要性は薄いし、旅行も青春18きっぷを使った鉄道旅行であまり不便を感じていませんでした。もっとも、僕の旅行スタイルは基本ずっと電車に乗って車窓を眺めて各地でおいしいものを食べ、綺麗な景色を見に行くという「移動時間」を重視するもので(このスタイルが後々バイクでの旅行スタイルに効いてきます笑)、一般の人の想像する観光地を転々として友達と思い出を作るような旅行とはだいぶ異なるからかもしれませんが。しかし山梨にある僕が大好きな温泉であるほったらかし温泉に行った時には少し困りましたね、バスがほぼないので山梨市駅から1時間ほど歩かなければなりません...それを除いてはあまり旅行での交通手段については困ってませんでした。

初めて、そして最もバイクに魅了されたのは大学1年生の春休みにアニメゆるキャン△2第9話を見たときでした。登場人物の主人公である志摩リンが原付で伊豆にキャンプに行く日の早朝、前日から志摩家に泊まっていたバイク乗りのリンのおじいちゃんと一緒に途中のコンビニまで走るシーンがあります。冬の早朝の凍りそうな寒さのなかの白い吐息に体がひきしまり、静まり返った世界に鳴り響くキュルキュルキュルドゥルンドッドッドッド...というエンジン始動音にこれからの旅の楽しい予感を感じ、二人で夜明け前の澄んだ空気の本栖湖の前を富士山を横目に走る...これを見た瞬間に僕はバイクにはまってしまったのです。

なんとかしてバイクに乗りたい!!!でも流石に高すぎてバイトじゃ無理、大学の勉強にも集中したいし...親にバイク欲しいと懇願してみましたが「事故ったら死ぬからダメ」と一蹴されました。まぁそりゃそうだよな。なのでとりあえず自転車に乗ることにしました。体力がどれくらいもつか分からなかったのでまずは自宅から5kmほどの公園へ。小学生の時に自転車で片道30km走って江の島まで行ったことがあったのでとりあえずこれを目標に、一回の輪行(自転車で出かけること)ごとに片道5km増やして練習しました。これがめちゃくちゃ楽しい!たった5km先の公園でも、自転車で行っただけで途中で寄ったコンビニでもちもちドーナツとコーヒーを食べるのがめちゃくちゃ楽しいんです。3~4月の厳冬期から少し寒さが和らいできたころに自転車をこいで火照った体で風を切る快感もどうしようもなく心地よいです。そんなこんなで楽しんでいたところあっという間に片道30kmに達し、江の島に行くのもそれほど苦ではなくなりました。頑張って自分の力で海を見る達成感!めちゃくちゃいいです。目標を達成してしまった僕は、さらなる欲望を抱くことになります。

次はお泊りツーリングだ!今までの輪行は全て日帰りでした。ゆるキャン△でもリンは1期第1話で自転車キャンプしています。俺だってできらぁ!ということでとりあえずキャンプではなく快活クラブで泊まってみることにしました。まずは小田原に行ってみました。これがマジで楽しかった!普段の風を切る心地よさに加えて泊まることができるので行動範囲が広く、いくつか観光地を巡ることができました。例えば大磯の海がきれいに見える公園にある茶室で抹茶を飲んだり、小田原城に行ったり、小田原の海で夕陽を見たり、宿の近くのスーパー銭湯で23時まで温泉、サウナ、食事処で50km走破した疲れをいやしたり...もうマジで最高だった。

そろそろ書き疲れたので、気が向けば次回「バイクの面白さ②」に続きます。バイクの話をしようと思ったのにバイクが出てこなくてすいません笑笑。バイクに乗る前の経験が僕のバイクライフに非常に大きな影響を与えているのでどうしても分量が多くなってしまいます。次回の記事でも恐らくバイクを買って所有するところまでは書けないと思います笑笑。お楽しみいただけたなら幸いです!次回もお楽しみに!!

一人暮し

 ある秋の暮れだった。焼酎のウーロン割りを飲もうと冷蔵庫を開けたが数本緑茶のペットボトルが入っているのみで他は何もなかった。酒はうちを酒場だと勘違いしている馬鹿な友が置いていくので空いているのか入っているのかも分からない瓶が床に転がり落ちている。きっとその中に焼酎もあるだろう。まあいい、ウーロン茶くらいなら近くの自販機にでも売っているだろう。適当な上着を羽織って部屋着のままスリッパで部屋を出た。

 外は澄んだ空気の匂いがした。暫く部屋から出ない間に冬が迫っていることは知らなかった。近所の全品100円の自販機にはウーロン茶がなかった。他の自販機をいくつかまわってようやく見つけた。ウーロン茶は150円だった。150円入れた。ボタンを押したが反応はなかった。何度押しても意味がなく、返金しようとレバーを引いたがお金は返ってこなかった。しょうがない、ウーロン茶の代わりに緑茶で割ろう。逆光の夕日に眼をすぼめていると、狭い道にバイクの排ガスが吹き抜け何かが落ちた。振り返ると封筒だった。郵便屋は落としたことに気づかなかったようで、もう先の角を曲がってしまった。僕は夢を見ている気がしてひとりでに家に引き返した。

 部屋に中身が入っている焼酎の瓶はなかった。

 

 実家が嫌いだった。毎朝6時ごろ階下で母が僕の名を叫んで叩き起こす。布団の中でぐずぐずしていると何度も何度も名前を呼ぶ。どんどんと足音を立てて階段を上って部屋に押し入り「正一、朝!」と言って布団を引っ剥がし、にんまりと笑って扉も閉めずにばたばたと出ていく。僕はいつも昨日の夜扉の鍵を閉めておけばよかったと後悔しながら起き上がり扉と鍵を閉めもう一度布団を被って眠る。母は一度僕を起こすと満足して二度は起こさない。次に僕が目を覚ますのは9時ごろだった。夜は僕が灯りを消し布団に潜って目を閉じ寝ようとする頃、仕事から帰った父がそっと部屋に入り「正一、今日は勉強できたか?」と聞く。父には以前勉強が手につかないことを相談していた。正直に「今日も全然できなかった」と言う僕に父は「ちゃんと勉強しなきゃダメじゃないか」と叱った。部屋に入る時に父が灯りを付けるようになってから「もう直ったから大丈夫、ありがとう」と言ってみた。その後も3日間は父は部屋に入って灯りを点け続けたが、ありがとうと言っていたら入ってこなくなった。学問はますます荒んだ。父は部屋を出ていく時に扉を閉めて行った。おかげで鍵を閉めるだけはせずに済んだ。早く実家を出たかったが、受験した地方の国立大学は尽く不合格で仕方なく都内の私立大学に通うことにした。学費が高く父は家から通えるのだから家から通えと言った。しかし暫く家から通学しても家を出たいという気持ちは変わらず、一人暮しを決心した。父に伝えるとやはり反対したが、一年粘り強く訴えてようやく認められた。僕は一人暮しを始めた。

 

 月曜一限の憂鬱な対面授業のために家を出た。全部欠席では単位が危うい。昨夜たくさん酒を飲んだせいで頭痛がした。早朝はあまりに寒かったのでダウンジャケットの上にコートを着てきたが、平日朝の空気に急かされて速足で歩かされた人々が乗る満員電車は熱気と湿気で不快だった。つまらない講義を聞き、ときどき会う大学の友達と飯を食べ、適当に遊びに付き合っているうちに雨が降り出した。彼は傘を持っていなかったようで、本格的に降り出す前に帰ると言って解散した。僕は長傘を持っていたが、鞄の中に折り畳み傘が入っていることは忘れていた。帰り路、もう家はすぐだったが手が冷えてしょうがないので自販機であたたかいココアを買った。取り出し口に手を伸ばすと、横の花壇の元にくしゃくしゃによれ曲がって濡れ、足跡のついた白い洋封筒を見つけた。消印は押されているが宛名はかすれてしまって読めない。手に取って裏返してみると封は閉じたままだった。どうせここに打ちやられても本人の元に届くわけでもないし宛名のない汚い手紙なんて読まないだろう。ぐしゃぐしゃの手紙の中身が何となく気になってココアと一緒にポケットの中に入れた。

 さっき買ったココアはまだあたたかかったが、家に入ると急に冷たい雨の降る窓際でコーヒーを飲みながら小説を読みたくなった。ダッフルコートのポケットからココアを取り出し、缶にへばりついていた封筒はストーブをつけてその風の当たるところに置いた。コーヒーにはこだわりがあった。台所にはコーヒーミル、サイフォン、ドリッパー、コーヒー専用のケトルがある。ケトルに水を入れて火にかけた。サイフォンとドリップのどちらにしようか迷ったが、洗うのが面倒なのでドリップにした。ずいぶん前に買ったコーヒー豆は酸化し湿気ていた。それでもコーヒーミルで挽くと香ばしい匂いが漂ってきた。そう、これこれ。コーヒーは飲んで味わうだけが良いのではない。それにかける手間、挽く間の香りまでが気分を高めてくれる。と、楽しんでいるうちに湯が沸いた。ドリッパーにフィルターをセットし挽いた豆を入れ湯を注ぐ。湯気が立つ。香りが咲く。僕は部屋に包まれて、部屋は僕に包まれる。

 お気に入りのカップを片手に本棚から本を1冊選び窓際に向かう途中、テーブルの上に封筒があった。そうだ、落ちていた封筒を乾かしていたのだった。いつまでも暖まらないぼろ部屋だが、封筒は乾いたようだ。少し明るい窓際の椅子に腰かけ、封を開けた。中には手書きの便箋が入っていて、辛うじて文字を読むことができた。僕はコーヒーを飲みながら手紙を読み始めた。

 

 本当はこんなこと直接会って伝えなければいけない、あるいは伝えないで仕舞っておかなければいけないと分かっています。けど私の中に置きっぱなしにはできないから手紙で伝えます。ごめんなさい。あなたとはもう会いたくない、会えない。私はあなたを見ずに私の中にいる理想の人をあなたに映していたの。物心ついたときからずっとこころがぽっかりと開いていた。何をしても満たされず、いつも将来の不安でふさぎこんでいたわ。それでお父さんやお母さんも私のことを心配して色々な習い事をさせたりアドバイスをしてくれたけどだめだった。何をしてもつまらない、何をしても退屈だった。でもそんな幼いころの私にも一つだけ退屈な世界から逃れられる場所がありました。それは物語の世界でした。私は本が好きです。私が初めて読んだ、そして今でも一番好きな本は、私のように何をしても退屈だと思っている主人公の女の子がある男の子と出会ってお互いのことをよく理解していくお話です。その女の子は何にも興味をそそられないと思っていたけれど、男の子と話しているうちに自分を認められるようになっていきます。そして二人はずっと一緒にいて支え合うことを誓います。あなたはベタな話だと嗤うでしょうけど、私、この本を読んで世界の見方が全く変わったの。世界がこんなにカラフルだなんて今まで気づかなかった。私もこんな男の子と付き合いたいな、という夢ができました。私は一生懸命がんばったのよ。些細な話題でもあなたに話しかけてみたり、隣を歩くときに手が触れる距離に近づいてみたり。でも何の意味もなかった。あなたは分かってくれなかった。それにあなたは他の女の子と話しているとき、私と話しているよりずっと楽しそうで優しかった。あなたは私の目がかわいいと言ったけど、こんな一重で左右非対称なひどい目がかわいいなんて嘘、私が気づかないとでも思った?その日はあなたに見せたくて新しいイヤリングをしていたのに気づいてくれなかったの、ショックだったわ。そんな風に私が悶々としている中、あなたは突然ディナーに行こうと私を誘った。あんまりだわ。あの本を読んでからいつの間にか私の心の穴を素敵な人が満たしてくれる、その可能性でもう満たされたものと勘違いしていたの。でも実際は穴はずっと開いていたの。あなたなら私のことを分かってくれると思ってたのに。さようなら。

 

 鼻で笑いながら便箋を封筒に入れ窓際に置いた。哀れだから今度花壇の元に戻しておいてやろう。本人の元に届くかもね。

 彼は本を開いた。ココアはすっかり冷え、飲みかけの酒瓶に紛れて忘れ去られた。ぐしゃぐしゃの手紙が彼に宛てられたものであることに気づくことはない。

入れ物としての詩ーゆるキャン△ED『ふゆびより』を考察する

注)この文章には以下の成分が含まれます。

・根拠の乏しい主張、及び筆者の直感

・テレビアニメ『ゆるキャン△』への情熱

・読者に対する無遠慮な言葉

これらのことを十分に理解した方はゆっくりしていってね

 

 詩とは入れ物なのではないか?中身は極力減らさなければならない。中身を入れるのは作者ではなく読者である。読者が中身を入れることで作品が完成する。読者が主体的に作品を作るのだ。作者は具体的な説明を避けて、説明するとしてもひとことだけだ。詩は短い。中身ではなく入れ物であるから。アニメのオープニング曲やエンディング曲(以下、OP、EDと省略する)を例に挙げてみよう。この場合中身はアニメの話だ。だから入れ物である歌を聞くとアニメの中身までも想像できる。そしてその中身を求めてアニメを見て、視聴者はアニメ制作者とともにOP、EDを作っていく。

 具体例としてゆるキャン△EDテーマ曲『ふゆびより』を二通りに考察してみよう。始めはアニメの中身を全く考えず、単なる詩として。表現法や場面、感覚に着目しよう。



1.額に感じる澄んだ空気 :触覚

2.吐く息が弾む

 

3.止まることもなく 歩き続けていたの :過去形によるカット(冬の屋外から忙しい現実へと場面変化)

4.ここで振り返る もうすぐだよ

 

5.朝日が昇る 私は旅する :対句、カットから戻る、視覚

6.新しい日に 自由を吸い込んだら :抽象と感覚の取り合わせ

7.あたたかい火を 囲んで座ろう :触覚、人物の登場

8.たわいもないこと 話しながら

 

9.鼻先に触れる木々の香り :1との対句、嗅覚

10.時間も忘れて

 

11.いつもの生活 やることがたくさんで :3と同じ、カットが入って日常へ

12.少し休んでも 大丈夫だよ :4と同じ

 

13.星が広がる 光が流れる :対句、カットから戻る、視覚、1~8が朝だったのに対し、10で時間が経過し、11~16までは夜。

14.優しい景色 心も包まれたら :抽象と感覚の取り合わせ

15.明かりを消して となりで眠ろう :視覚の退場、人物の登場

16.たわいもないこと 話しながら :8の反復。13~16は5~8に対応し、終わりが揃っていることでまとまりを感じる。

 

17.一人でいることの方が好きだった けれど :思想の展開

 

18.朝日が昇る 私は旅する :18,19は5,6の反復

19.新しい日に 自由を吸い込んだら

 

20.ゆるやかなとき 一緒に過ごそう :5,13に対応する。しかし5,13の一人称身体的感覚が、人と一緒に過ごすことに変化している。

21.君がいれば 自然と笑顔になる

22.ココアを入れて 写真も撮ろう :名詞「ココア」→味覚。あたたかくて甘い飲み物を想起。「君」との関係の比喩と読める?

23.知らない世界も 歩いてみよう :17の続き。一人よりも「君」といることを選ぶ?

 

24.たわいもないこと 話しながら :8,16の反復。統一感がある。



 ウーン、やっぱり名文だ。キャンプの中身にはほとんど触れないで、感覚と、「君」と一緒にいることの良さ、場面のカット、取り合わせの技法を盛り込んでたった24文だけで世界を作っている。中身にはほとんど触れていないのに冬に親しい人と焚き火キャンプに行って美しい自然に囲まれる優雅な時間を過ごしている気分になる。次はアニメに則して解釈してみよう。以下、『ゆるキャン△』Season1を観た人でないと伝わらないことをご承知ください。



1.額に感じる澄んだ空気 :2から考えるに1話。

2.吐く息が弾む :1話、リンが自転車で息を切らしながら本栖湖に向かうシーン。

3.止まることもなく 歩き続けていたの :作品中の描写はない。視聴者へのメッセージか。

4.ここで振り返る もうすぐだよ :視聴者を作品中へ引き込む。

 

5.朝日が昇る 私は旅する :朝日が昇るシーンは3話ふもとっぱらでのなでしこが富士山のかげから昇る朝日を見るシーン、12話クリキャンでみんなで朝日を見るシーンか。「私」はリン、「旅」はリンのソロキャンだろう。

6.新しい日に 自由を吸い込んだら :5の続き。「自由」の描写は作品中にはない。3,4で忙しない生活を送る視聴者へのメッセージか。

7.あたたかい火を 囲んで座ろう :(「囲む」から3人以上と推定)5話野クル初キャンプ、11,12話クリキャン焚き火。

8.たわいもないこと 話しながら :7の続き

 

9.鼻先に触れる木々の香り :(木々に囲まれるのはキャンプ回であるが、木々と10の時間の経過にフォーカスしているもののみ挙げる)1話リン本栖湖ソロキャンプ。

10.時間も忘れて :1話リン本栖湖ソロキャンプ中のリンが読書に耽っている間の自然描写。

 

11.いつもの生活 やることがたくさんで :3,4に同じ

12.少し休んでも 大丈夫だよ :同上

 

13.星が広がる 光が流れる :3話ふもとっぱらの夜、5話リン高ボッチソロキャンでの夜景となでしこ野クルキャンでの夜景写真交換、12話リンとなでしこが同じテントから頭を出して星空を眺めながら話すシーン。「光が流れる」は夜景の車の流れか?

14.優しい景色 心も包まれたら :13~16まで、5話の夜景写真交換の場面で解釈する。優しい景色とは別々の場所にいるけれども美しい景色を見て相手にも見せてあげたいという思い。写真を交換することで心も共有され、優しさに包まれる。

15.明かりを消して となりで眠ろう :実際は離れているが、「きっと、そらでつながってる」。心が共有されたことでとなりにいるかのように感じている。

16.たわいもないこと 話しながら :LINEのやりとり。

 

17.一人でいることの方が好きだった けれど ゆるキャン全話を通して、ソロキャンしかしてこなかったリンがなでしこと出会い二人でのキャンプや野クルメンバーとのクリキャンなどを経てグルキャン「も」同じくらい楽しいことに気づくという暗示。

 

18.朝日が昇る 私は旅する

19.新しい日に 自由を吸い込んだら

 

20.ゆるやかなとき 一緒に過ごそう :22から考えるに、20~24は12話クリキャンか。

21.君がいれば 自然と笑顔になる :「君」はリンからみたなでしこ。

22.ココアを入れて 写真も撮ろう :ココアを入れるシーンは12話クリキャンの鳥羽先生が目覚めて斎藤がココアを勧めるシーン、夜、動画を見ながらの焚き火。「みんなで」写真を撮るシーンはその前の斎藤のヘアアレンジ後。

23.知らない世界も 歩いてみよう :リンがグルキャンをすること。1話でなでしこがリンと出会ってキャンプを始めること。

 

24.たわいもないこと 話しながら :12話クリキャン夜。

 

 

 このように、アニメを見ることによって入れ物であった詩の中身を入れることができた。美しい自然に囲まれてリンがなでしこや野クルメンバーとキャンプをするシーンが思い浮かぶだろう。そして一旦アニメを見てしまえばこの歌を聴くだけでアニメの中身とその感動を思い出すことができる。

 詩という文学では作者が中身を述べず入れ物だけを提供することにより、読者、視聴者、映像制作者が自由に中身を入れることができる。詩が心を動かすのは、その共同制作により言葉そのもの以上の豊かな世界、二次創作が生まれるからではないだろうか。

 

あとがき)

以下は詩に関する論の展開はせず筆者の感動とゆるキャン△という作品への崇拝を綴るだけとなります。ご了承ください。

いやはや、『ふゆびより』をアニメに結びつけるとこんなに深いなんて知らなかったよ!二つ目の考察での13~16が5話のそれぞれのキャンプだと仮定すると、離れていても心はつながっている、っていうゆるキャン△のテーマの一つが表れていて感動した!今まで「光が流れる」は流れ星のことかと勝手に思ってたけど、高いところから見下ろす夜景と思えば納得がいく。それに「優しい景色」で景色が優しいってどういうことなんだと思っていたが、これも仲のいい友達に美しい景色を見せてあげたいっていう気持ちと捉えれば確かに優しいなぁ。現実の我々がこのアニメ世界に強く惹かれるのは、アニメ映像のリアリティはもちろん、4,5や11,12のように詩が作品世界の中だけにとどまるのではなく、現実の我々に向けた同情、共感によりハッとさせられるからというのも今思えばあったんだと思う。なんにせよ、アニメの映像、BGM、声、物語、OP&EDの全てが視聴者を引き込み、豊かな自然の中でキャンプをしているように感じさせていて大変すばらしい作品だと思う。これ以上の日常系アニメは世に出てこないでしょうなあ。